
現地時間2026年6月20日(日本時間6月21日)、米ネバダ州ラスベガスのUFC APEXで『UFC Fight Night: Kape vs. Horiguchi(通称UFCファイトナイト・ラスベガス119)』が開催される。タイトルマッチこそ組まれていないものの、メインに据えられたのはフライ級トップ5同士の好カード、そして約8年半ぶりの“再戦”——マネル・ケイプvs堀口恭司だ。両者は2017年大晦日のRIZINで一度拳を交えており、その因縁の決着が王者への挑戦権を懸けてラスベガスで再燃する。本稿では全12カードを、すべて裏取り済みの事実に基づいて読み解く。
この大会を貫く3つのストーリーライン
第一に「フライ級の頂点へ続く再戦」だ。 メインのマネル・ケイプ(同級2位)と堀口恭司(同級5位)は、勝てば王者ジョシュア・ヴァンへの挑戦が見えてくる位置にいる。しかも両者は2017年のRIZINで対戦済み。8年半の時を経た再戦が、そのまま挑戦者決定戦の意味を帯びる。
第二に「無敗のプロスペクトたち」だ。 プロ10戦全フィニッシュで無敗のムルタザリ・マゴメドフ、UFC4戦4勝・通算9戦無敗のナヴァホ・スターリング、IBJJF世界王者でMMA無敗のビア・メスキータ、UFC無敗のアンドレ・リマ、そしてデビュー戦を飾る無敗のシェーン・コリンズ——勢いに乗る未完の逸材が随所に並ぶ。
第三に「ベテランとデビュー組の交錯」だ。 UFC通算40戦に迫るアンドレ・フィリやイオン・クテラバといった老練の戦士に、新進気鋭がぶつかる。残留をかけた中堅の再起戦も多く、APEXのリングは生き残りを賭けた緊張感に満ちている。
メインイベント|マネル・ケイプ vs 堀口恭司(フライ級/5分5R)
8年半ぶりの再戦。スピードと総合力の堀口が、3連続KOの“スターボーイ”を止められるか。
メインは日本の至宝・堀口恭司(36勝5敗1無効試合/KRAZY BEE・アメリカン・トップチーム)が主役だ。群馬県高崎市出身、空手をバックボーンに故・山本"KID"徳郁の薫陶を受けた「KARATE KID」は、修斗バンタム級王者、RIZIN初代バンタム級王者(2度戴冠)・初代フライ級王者、Bellatorバンタム級世界王者と、渡り歩いた団体すべてで頂点を極めてきた稀代の実力者。2013〜16年の第1次UFC時代にはデメトリアス・ジョンソンのフライ級王座にも挑戦している。再契約後は好調で、2025年11月のUFCカタールでタギル・ウランベコフをリアネイキッドチョークで一本(復帰戦)、2026年2月のUFCベガス113ではアミル・アルバジを有効打73-16・相手のテイクダウン試投をすべて防御して判定で完封。フライ級5位に位置する。
対するマネル・ケイプ(22勝7敗/Xtreme Couture)は、アンゴラ出身のポルトガル国籍。「スターボーイ」の異名を持つ元RIZINバンタム級王者で、2019年大晦日には朝倉海を破って戴冠した経歴を持つ。現在はフライ級2位につけ、直近3戦すべてKO/TKO決着の3連勝中。2024年12月にブルーノ・グスタヴォ・ダ・シルバ、2025年3月にアス・アルマバエフ、そして2025年12月にはブランドン・ロイバルを1RでKO(パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト)と、破壊力を見せつけてきた。ロイバル戦後に王者ヴァンへの挑戦権を得たが、UFC327で実現せず、待つことを選ばず自ら堀口との一戦を選んだと報じられている。
そして両者には因縁がある。 2017年12月31日、RIZIN World Grand Prix 2017 Final Round(バンタム級GP準決勝)で対戦し、堀口がアームトライアングルチョークで3R一本勝ちを収めているのだ。本戦はその約8年半ぶりの再戦となる。
戦術的な焦点は「スピードとテクニックの堀口」対「パワーとアグレッシブさのケイプ」。 堀口は空手仕込みの精密な打撃と足を使った距離管理でケイプの一発を外し、ポイントを刻むか、復帰戦で見せたようにグラップリングへ持ち込んで仕留めたい。ケイプは持ち味のパワーと3連続KOの勢いそのままに、堀口を捕まえて一撃を狙う。近年の安定感とスピードで堀口がややリードと見るが、ケイプは一発で試合をひっくり返すKO力を持つ。堀口が距離を支配できれば判定〜後半フィニッシュ、ケイプが捕まえれば早いラウンドのKO——勝者がタイトル戦線に大きく近づく、緊張感あふれる再戦だ。
コメインイベント|イオン・クテラバ vs ナヴァホ・スターリング(ライトヘビー級/5分3R)
荒々しい“ハルク”の一撃か、規律ある無敗の若武者か。
イオン・クテラバ(20勝11敗1分/モルドバ)は「ザ・ハルク」の異名どおり、序盤の爆発力で知られるベテラン。通算KO/TKO13・サブミッション4で、1ラウンド決着が16という決定力が最大の武器だ。直近はオウマー・サイを1Rのサブミッションで仕留めており、好不調の波はあれど一発の怖さは健在。対するナヴァホ・スターリング(9勝0敗・無敗/City Kickboxing)は、ニュージーランド出身でマオリ系のルーツを持つ若武者。イズラエル・アデサニヤらを擁する名門でユージン・ベアマンの薫陶を受け、UFCでは4戦4勝。直近はブルーノ・ロペスを2R TKOで下し、判定中心だった戦いぶりにフィニッシュ力も加わってきた。
焦点はクテラバの爆発力をスターリングが凌げるか。 クテラバは1ラウンドの早い時間に勝負を仕掛けたい。スターリングは無敗らしい落ち着きと組み立てられた打撃で序盤の圧を耐え、中盤以降にペースを握れれば理想だ。完成度で勝るスターリングがやや有利と見るが、クテラバの一発とサブミッションは常に番狂わせを呼び込む。
メインカードの注目試合
ムルタザリ・マゴメドフ vs メルシック・バグダサリアン(フェザー級)
今大会屈指の注目株がオクタゴンに登場する。ムルタザリ・マゴメドフ(10勝0敗/キルギス出身)は、プロ全10戦すべてをフィニッシュで終えてきた無敗のプロスペクト。内訳は5KO/TKO・5サブミッションで、判定経験はゼロ。2025年9月のダナ・ホワイトのコンテンダーシリーズで無敗の相手を1R 1:37でTKOして契約を勝ち取り、本戦がUFCデビュー戦となる。迎え撃つメルシック・バグダサリアン(8勝3敗/アルメニア出身)は、キック・ボクシング出身の立ち技巧者で、2021年のUFCデビュー戦でパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを受賞した実力者。直近はジーン・シウバにTKO負けと立て直しを図る局面だ。UFC経験と打撃の練度でデビュー戦のマゴメドフを序盤に止められるか、それとも無敗の決定力が新たな“ハイライト”を生むか。
ハイダー・アミル vs クリスチャン・ロドリゲス(フェザー級)
両者ともに直近2連敗中という、後のないサバイバルマッチ。「ザ・ハリケーン」ハイダー・アミル(11勝2敗)は前に出る圧力と手数のストライカーで、UFCではイ・ジョンヨン戦でパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを受賞した実績を持つ。対するクリスチャン・ロドリゲス(12勝4敗/Roufusport)は、レスリングを織り交ぜるバランス型。ラウル・ロサスJr.をはじめ複数の無敗選手から初黒星を奪ってきた“無敗キラー”でもある。総合力で上回るロドリゲスがオッズ上はフェイバリットだが、アミルのパンチ力でフィニッシュの目も残る競った一戦だ。
ヴィニシウス・オリヴェイラ vs アンドレ・フィリ(フェザー級)
ラッパーの顔も持つブラジリアン「Lok Dog」ヴィニシウス・オリヴェイラ(23勝4敗)が、減量苦(135ポンドで4回失神したと明かす)を理由にフェザー級へ階級を上げての初戦に臨む。直近はマリオ・バウティスタに一本負けでUFC6連勝が止まったが、デビュー戦が「ノックアウト・オブ・ザ・イヤー」候補に挙がるなどフィニッシュ力は折り紙付きだ。対するは老練のベテランアンドレ・フィリ(25勝13敗/Team Alpha Male)。リーチと経験を活かしたタフな戦いが持ち味で、UFC史上最多タイ(5)のスプリット判定勝利を記録する“接戦巧者”でもある。フィニッシュ力ならオリヴェイラだが、フルラウンドにもつれればフィリのタフネスが活きる。
プレリム(前座カード)
アンドレ・リマ vs ケヴィン・ボルハス(フライ級/キャッチウェイト)
無敗のアンドレ・リマ(11勝0敗・UFC4勝0敗/ブラジル)は、2025年3月のダニエル・バレス戦でパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを獲得して以降、試合キャンセルが続き約1年以上のブランクを経ての再起戦。なお相手のケヴィン・ボルハス(10勝5敗/ペルー)が計量で3ポンド超過(129ポンド)したため、試合はキャッチウェイトで行われる。ボルハスはKO勝ち8を誇るフィニッシャーだが直近2敗と苦戦中。総合力に勝るリマがやや優勢と見るが、ボルハスの一発には注意が必要だ。
ビア・メスキータ vs メリッサ・マリンズ(女子バンタム級)
ビア・メスキータ(7勝0敗・無敗/ブラジル)は、IBJJF世界選手権黒帯部門で女子最多の金メダル10個を誇る正真正銘の柔術レジェンド。MMAでも無敗を貫き、UFCデビュー戦ではパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを受賞した。対するメリッサ・マリンズ(7勝2敗/イングランド)は打撃主体で、プロでのサブミッション勝ちは0。試合がマットに渡れば世界トップのBJJを持つメスキータが圧倒的に有利で、ブックメーカーも大本命(-550〜-600)に設定。マリンズがテイクダウンを切って打撃戦に持ち込めるかが唯一の活路となる。
アラン・ナシメント vs ミッチ・ラポーゾ(フライ級)
アラン・ナシメント(22勝6敗/ブラジル)は22勝中16勝が一本というサブミッション・グラップラーで、現在UFC4連勝中。直近はコディ・ダーデンを2Rアナコンダチョークで仕留めた。対するミッチ・ラポーゾ(10勝3敗/米国)は、UFC最初の2戦をいずれもスプリット判定で落としたが、2025年10月にUFC初勝利を挙げて勢いに乗りたいところ。経験とサブミッション力でナシメントがやや優位だが、接戦に強いラポーゾが距離を保てば判定までもつれる可能性も十分ある。
ガストン・ボラニョス vs マイケル・アズウェルJr.(フェザー級)
ペルー出身のムエタイ/キック巧者ガストン・ボラニョス(8勝5敗)が、フェザー級デビュー戦で前進圧力の若手マイケル・アズウェルJr.(11勝4敗/米テキサス)と対戦。両者ともUFCでの戦績が振るわず、残留をかけた一戦だ。ボラニョスの一撃の威力か、アズウェルの活動量とタフネスか。打撃精度とスタミナ配分の差が出やすい組み合わせとなる。
レオン・シャバジアン vs レヴァン・チョクヘリ(ウェルター級)
ともにUFCデビュー戦の新人対決。レオン・シャバジアン(12勝4敗/米国)はUFCミドル級のエドメン・シャバジアンの兄で、直近4連勝はすべて1Rのサブミッション(ギロチン主体)という鮮烈なフィニッシュ力が武器。対するレヴァン・チョクヘリ(14勝3敗/ジョージア)は元Bellatorのウェルター級戦士で、14勝中11勝がKO/TKOという重い打撃が持ち味。打撃戦ならチョクヘリ、組みに持ち込めばシャバジアンという、どちらも早期決着の予感が漂う一戦だ。
カロル・ホザ vs ルアナ・サントス(女子バンタム級)
UFC女子バンタム級ランカー同士の対決。カロル・ホザ(19勝7敗/ブラジル・同級8位)は多彩なローキックと判定巧者ぶりで上位を維持するBJJ黒帯。対するルアナ・サントス(10勝2敗/同級11位)は柔道出身の若手グラップラーで、投げ・テイクダウンから極めを狙い、現在2連勝中だ。打撃で距離を支配したいホザと、組みに持ち込みたいサントス。ランキング上位のホザがやや有利と見るが、サントスのテイクダウン成功率次第では波乱も十分ある。
シェーン・コリンズ vs オタリ・タンジロヴィ(フェザー級)
大会の幕開けは、ともにUFCデビューを飾る無敗・新鋭対決。「ハリウッド」シェーン・コリンズ(7勝0敗・無敗/米国)は、ウリヤ・フェイバー主宰A1 Combatのフェザー級王者で、7戦中5戦をフィニッシュする爆発力を持ち、直近2戦は連続1R KO/TKO。オッズでもフェイバリットだ。対するオタリ・タンジロヴィ(10勝1敗/ジョージア)はキックボクシングベースで、多彩な蹴りのスピードが武器。バンタム級からフェザー級に上げての初戦となる。無敗のフィニッシャーと、転級デビューの新鋭——若いプロスペクト同士の打撃戦に注目したい。
まとめ|ラスベガスで再燃する“因縁”と、無敗のうねり
UFCファイトナイト・ラスベガス119は、タイトルこそ懸からないものの、メインに堀口恭司vsマネル・ケイプという8年半越しの再戦を据えた、見どころの濃い一夜だ。RIZINで堀口が一本勝ちを収めた因縁の相手と、今度はUFCフライ級の頂点への挑戦権を懸けて再びまみえる。さらにマゴメドフ、スターリング、メスキータ、リマ、コリンズら無敗のプロスペクトが各所で躍動し、フィリやクテラバといったベテランが新進気鋭を迎え撃つ。日本のファンにとっては、世界の舞台で再び勝ち上がろうとする堀口の姿こそ最大の見どころ。日本時間6月21日、ラスベガスのAPEXで繰り広げられる再戦の行方を、ぜひ見届けてほしい。
※本記事は2026年6月時点で公表された情報・各種一次資料(UFC公式・各選手プロフィール等)に基づきます。戦績・対戦カード・契約体重・試合順は今後の計量や発表により変動する可能性があります。

