
三本のベルトと一人の元K-1王者──「THE KNOCK OUT 2026」、代々木に集う18試合の覚悟
2026年6月21日、東京・国立代々木競技場 第二体育館。「REMY presents KNOCK OUT.65 ~THE KNOCK OUT 2026~」は、開場12:45/開始13:30、全18試合という大ボリュームで組まれた。看板はKNOCK OUT-BLACKの二本のベルト(スーパーフェザー級・スーパーバンタム級)と、KNOCK OUT-REDのスーパーライト級王座を懸けた3つのタイトルマッチ。さらにそこへ、第5代K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級王者というキャリアを引っ提げたレオナ・ペタスがKNOCK OUTデビューという、団体の枠を超えた話題が重なる。BLACK(立ち技)、RED(肘ありのムエタイ系)、そしてMMA畑の選手たちが乗り込むUNLIMITEDというハイブリッドルール──KNOCK OUTが抱える複数の闘いの形が、一日のうちに代々木で交差する。
大会を貫くもの──「継承」と「越境」
この日のテーマを一言にするなら、「継承」と「越境」だ。メインの龍聖は「カリスマ継承」を名乗り、コメインとセミ前では百戦錬磨の王者・元王者たちが若い挑戦者を迎え撃つ。一方で、レオナ・ペタス(K-1)、木村"フィリップ"ミノル(K-1/RIZIN)、大雅(RISE/K-1からMMAを経由)、神保克哉(Krush)、宮原穣(空道/Karate Combat)といった他団体・他競技からの越境組が、UNLIMITEDやBLACKのリングで腕を試す。タイトルの行方と、越境者たちの順応。その二つの軸でカードを追うと、この大会の濃さが立ち上がってくる。
メインイベント:KNOCK OUT-BLACKスーパーフェザー級王座決定戦/龍聖 vs 小森玲哉
空位の王座を争う一番に、対照的な二人が立つ。龍聖(BRAID/TEAM SUERTE、175cm)は通算24戦22勝(13KO)2敗。初代KNOCK OUT-BLACKフェザー級王者、ISKA世界スーパーフェザー級(K-1ルール)王者という戴冠歴を持ち、13KOが示す決定力が最大の武器だ。ニックネームの「カリスマ継承」が示す通り、団体の看板を背負う気概で臨む。対する小森玲哉(ONE'S GOAL、173cm)は15戦10勝(3KO)4敗1分。「流血、激闘、ド根性」を異名に掲げる、打ち合い上等のタフネスが身上の選手だ。
数字の上では、戦績・KO率・タイトル実績のいずれも龍聖が大きく上回る。鍵は、小森がその火力をどこまで凌ぎ、自らの土俵である「激闘」へ引きずり込めるか。龍聖が早い段階で当てて主導権を握れば一方的になりかねないが、小森が持ち味のしぶとさで中盤以降の消耗戦に持ち込めれば、ベルトの色は分からなくなる。空位の王座だけに、両者にとって「初代の次」を刻む価値ある一戦だ。 (※龍聖の直近戦・バックボーンの一部は単一ソースに基づく。両者の細かなスタイル区分は明示ソースが乏しく、断定は避けた)
コメインイベント:KNOCK OUT-BLACKスーパーバンタム級タイトルマッチ/森岡悠樹 vs 晃貴
王者経験者同士の渋い好カード。森岡悠樹(北流会君津ジム、175cm)は37戦22勝(13KO)12敗3分のベテランで、「トライデント・ストライカー」の異名通り長身を生かした打撃が持ち味。第2代KNOCK OUT-BLACKスーパーバンタム級王者をはじめ複数団体で戴冠してきた経験値が強みだ。挑む晃貴(team VASILEUS、160cm)は28戦17勝(7KO)10敗1NC。第4代Krushバンタム級王者、第9代Bigbangスーパーバンタム級王者というK-1系のキャリアを持つ。
構図を決定づけるのは15cmの身長差。森岡が長いリーチでアウトボックスし、的確に距離を刻めればベテランの試合運びが活きる。晃貴は、その射程をいかに掻い潜って懐に飛び込み、自分の間合いで手数を出せるか。短身側がどう距離を潰すかという、立ち技の普遍的なテーマが詰まった一番だ。 (※本タイトルが防衛戦か王座決定戦か、両者の現王者・挑戦者の別は公式情報に明示がなく、ここでは触れない)
第16試合:KNOCK OUT-REDスーパーライト級タイトルマッチ/デンサヤーム・ウィラサクレック vs 久井大夢
肘ありのREDルールで争われる、経験と早熟の激突。デンサヤーム・ウィラサクレック(ウィラサクレック・フェアテックスジム、175cm)はタイ・ナコーンラーチャシーマ出身、通算114戦83勝(9KO)28敗3分という途方もない試合数を誇る歴戦のムエタイ系ファイター(タイ出身・フェアテックス系ジム所属からムエタイの素地が強く示唆される)。第2代KNOCK OUT-REDスーパーライト級王者でもある。対する久井大夢(TEAM TAIMU、176cm)は2005年生まれの20歳ながら、KNOCK OUT-RED/BLACKの複数階級王座にKun Khmer世界王座まで獲った早熟の多冠王だ。通算27戦19勝(6KO)7敗1分。
デンサヤームの83勝は判定決着が多く、肘・膝・蹴りを織り交ぜたムエタイの試合運びでラウンドを支配するタイプ。久井は若さと多階級を制してきた総合力で、いかに主導権を奪うかが問われる。久井は直近4月に秋元皓貴へ判定僅差で敗れており(単一ソース)、ここは再起を懸ける一戦でもある。一発のKOより組み立てで勝ってきた両者だけに、3ラウンドを通じた手数とダメージの応酬──判定にもつれる濃密な攻防が予想される。 (※王者・挑戦者の別、防衛戦か否かは公式に明示がなく断定しない。デンサヤームのムエタイ歴は明示ソース未取得のため示唆に留める)
越境者の試金石:レオナ・ペタス、KNOCK OUTデビュー(第13試合・BLACK -61.0kg契約)
この大会のもう一つの主役が、第13試合に登場する。レオナ・ペタス(THE SPIRIT GYM/LARA TOKYO、175cm)──第5代K-1 WORLD GPスーパー・フェザー級王者、第9代Krushスーパー・フェザー級王者という実績を持つ、「石の拳」の異名で知られる右ストレートのスペシャリストだ。通算43戦33勝(15KO)9敗1分。K-1との契約満了を経て、本戦がKNOCK OUTデビューとなる。本人は「試運転。それでもKOで終わる」と宣言している。迎え撃つ成尾拓輝(究道会館、173cm)も29戦18勝(14KO)の「Mr.フルスイング」、HOOST CUP日本ライト級王者で、打てば響く相手だ。「石の拳」対「フルスイング」、KO率の高い者同士の真っ向勝負は早期決着の予感が濃い。ペタスの一発に当たれば成尾のアップセットも十分にある。
注目の一戦:第14試合・BLACKウェルター級/ユリアン・ポズドニアコフ vs 松岡力
第3代KNOCK OUT-BLACKウェルター級王者ユリアン・ポズドニアコフ(ウクライナ、178cm、22戦18勝8KO4敗)の登場(※今回は非タイトル戦)。ロシアの侵攻を機に祖国を離れた経緯を持つ彼は、2025年大晦日に中島玲を1R KOで下して戴冠した実力者だ。対するは第9代Krushウェルター級王者・NDC王者の松岡力(K-1ジム五反田チームキングス、177cm、25戦14勝6KO9敗2分)。ローキックを軸に組み立てる実績者に、王者がどんな"新バージョン"を見せるか。 (※ポズドニアコフの戦績・身長は出典により数値の食い違いがあり、公式値を採用した)
注目の一戦:第15試合・BLACKライト級/大沢文也 vs ニカ・パパヴァ
ベテラン対新鋭。大沢文也(ザウルスプロモーション、173cm)は通算60戦のキャリアを持ち、第4代KNOCK OUT-BLACKライト級王者、第7代Krushライト級王者、K-1 2018ライト級トーナメント準優勝の実績者だ(34勝22敗3分1NC)。対するニカ・パパヴァ(ジョージア、180cm)は2008年生まれの18歳にして11戦全勝(7KO)の無敗。ジョージアでボクシング・キックの国内王座を多数獲ってきた長身の逸材だ。大沢の経験とラウンドコントロールが、若さと勢い、そしてリーチを武器にする新鋭にどう対するかが見どころとなる。
その他の対戦カード(第1〜第12試合)
第1試合 UNLIMITED スーパーフェザー級:MMAを背景に持つ無敗の20歳プロスペクト石渡寛崇(Fired Up Gym、4戦4勝)が、プロ1戦の藁谷兼介(クロスポイント・パラエストラ拝島、32歳)を迎える。経験差・年齢差は大きく、石渡の手数とハイブリッドルールへの対応力が問われる開幕戦だ。
第2試合 BLACK フェザー級:飛びヒザなどダイナミックなKO技を持ち、2025年9月に森岡悠樹との王座決定戦も経験した福田拓海(クロスポイント大泉、176cm、11戦6勝4KO4敗1分)と、勝利の多くをKOで奪う倒し屋雅治(レンジャージム、22歳、10戦5勝5KO4敗)の「KOアーティスト対決」。両者とも爆発力と脆さを併せ持つタイプで、早期決着の可能性が高い。
第3試合 BLACK バンタム級:通算37戦の39歳ベテラン工藤"red"玲央(TEAM TEPPEN、必殺の「かえる跳び」を持つ個性派)が、沖縄地下格闘技2冠を引っ提げたプロ1戦1勝(1KO)の新鋭知花優太(タイガーキック沖縄、27歳)と対戦。経験と変則技のベテラン対、未知数ゆえに怖いフィジカルの若手という構図だ。(※工藤の戦績は出典により数値差があり公式値を優先)
第4試合 RED フェザー級:52戦を戦い抜いた技巧派竹内賢一(TenCloverGym世田谷、33勝17敗2分、第4代Bigbangフェザー級王者)に、KO率の高い23歳茂木豪汰(上州松井ジム、8戦5勝4KO)が挑む。竹内が距離を制して刻むか、茂木が懐に飛び込んでKOを奪うか。
第5試合 BLACK スーパーフェザー級:黒星のほぼ無い若手同士、辰次郎(Sports 24、7戦6勝1敗)対宇山京介(クロスポイント渋谷、6戦5勝1分の無敗)の好カード。ただし宇山が計量で1.7kg超過し、減点2・グローブハンデ・ファイトマネー譲渡というペナルティを背負ってのスタートとなった。ウェイトで勝る宇山のパワーと、減点アドバンテージ+リーチを持つ辰次郎──変則的な前提が勝敗を左右する。
第6試合 RED ライト級:ムエタイ仕込みの「魔王」古村匡平(FURUMURA-GYM、33戦24勝11KO、大和muaythai王者)と、全勝利をKOで挙げるボクシング出身の21歳木村涼仁(Bellus Gym、6戦5勝5KO)。強烈なミドル・ヒザでレンジを支配する古村か、パンチのレンジで一発を狙う木村か。なお古村が450gの計量超過で減点1相当のペナルティを受けている。
第7試合 BLACK フェザー級:2階級制覇の実績を持つ「ストーンフィスト」古木誠也(REX GYM、19戦14勝10KO、第3代BLACKフェザー級王者)が、2006年生まれ19歳の河崎鎧輝(真樹ジムオキナワ、12戦9勝3KO2敗1分)を迎える。古木の倒し圧と、若き河崎のスピード・手数の対比。
第8試合 UNLIMITED -77.0kg契約:空道(大道塾)出身でSENSHI王者、Karate Combatも経験した異色の打撃家宮原穣(MIYAHARA DOJO、7戦5勝2敗)と、Krush王座挑戦歴を持つキック専業の神保克哉(サクラバファミリア/K-1ジム蒲田、27戦17勝9KO9敗1分)。オープンフィンガー寄りの過激ルールで、異種格闘技色の濃い攻防になる。
第9試合 UNLIMITED 女子バンタム級:「流血のマドンナ」鈴木万李弥(クロスポイント吉祥寺、158cm、25戦15勝、第5代KPKB女子バンタム級王者)が、中国の強豪リュウ・ユエアル(陝西大秦騫秋ファイトクラブ/CFP、165cm、16戦14勝2敗、武林風女子王者)と対戦。7cmのリーチ差を、鈴木がタフネスと前進で埋められるか。
第10試合 UNLIMITED -61.5kg契約:元RISE/K-1/Krush王者で、MMAを経てKNOCK OUTに戻ってきた「反逆の猛虎」大雅(TRY HARD GYM、キック45戦30勝)と、ボクシング7KO・MMA無敗の「剛腕パパイヤ」福永輝(フリー、沖縄)。打撃の精度と組みの引き出し、クロスオーバー適性が問われるUNLIMITEDらしい一戦。
第11試合 UNLIMITED -73.0kg契約:30KOを誇る第3代K-1 WORLD GPスーパー・ウェルター級王者木村"フィリップ"ミノル(Battle-Box、ブラジル出身、51戦37勝30KO)が、2026年4月の沖縄大会で喫したわずか26秒のKO負けからの再起を期す。相手はMMAベースの草MAX(グラバカ赤羽、181cm)。「戦慄のブラジリアンフック」が火を噴くか、草MAXが組みで波乱を起こすか。
第12試合 UNLIMITED -62.0kg契約:第4代KNOCK OUT-BLACKフェザー級王者で中国・四川出身のチュームーシーフー(郭強ファイトクラブ/CFP、35戦29勝11KO)と、覆面ファイターでDEEP☆KICK王者の戦闘員1号(EXARES、大阪、本名・阿部寛樹)の王者対決。経験とKO率で勝るチュームーシーフーに、増量の利く戦闘員1号がどう食い下がるか。(※両者とも一部戦績に出典差あり、公式値を採用)
まとめ
3本のベルトを懸けたタイトルマッチに、元K-1王者レオナ・ペタスの新天地デビュー、そしてUNLIMITEDで腕を試す越境者たち。「THE KNOCK OUT 2026」は、王座の継承劇と、団体・競技の壁を越えてきた挑戦者たちの試金石が同居する、18試合一気通貫の長丁場だ。メインの龍聖が看板に懸ける「継承」、コメインと第16試合で交わる経験と早熟、そして越境組がハイブリッドルールにどう順応するか──。代々木の一日を最後の一番まで見届ける価値は、十分にある。
本コラムの選手データ(戦績・所属・タイトル歴・身長・生年)は、各選手のKNOCK OUT公式プロフィールページを一次情報として裏取りした。レオナ・ペタス/龍聖/久井大夢/松岡力/大雅/木村"フィリップ"ミノルなど一部選手はWikipedia・専門メディア(ゴング格闘技、MMAPLANET、BoutReview等)で補強した。計量結果(宇山・古村の超過とペナルティ)はBoutReview/ゴング格闘技で確認している。一方、王座の防衛/決定の別や一部選手の細かなファイトスタイル、出典間で数値の食い違う戦績については、断定を避けるか公式値を優先して記述した。

