
9戦9勝の怪物がライト級へ——完売のニューピアホールで問われる「無敗神話」DEEP 132 IMPACT徹底プレビュー
7月5日(日)、東京・ニューピアホールで「宗明建設Presents DEEP 132 IMPACT」が開催される(13時30分開場、14時試合開始)。チケットは全席完売で当日券の販売はなし。配信はU-NEXTとDEEP/DEEP JEWELSメンバーシップで13時55分から、ゲスト解説に泉武志、実況は鈴木芳彦という布陣だ。メインイベントには9戦全勝のKOアーティスト・相本宗輝がライト級で復帰し、4連勝中の「JAPAN TOP TEAMの秘密兵器」山田聖真と激突。さらにDEEPストロー級のベルトを2度巻いた越智晴雄の引退式&エキシビションマッチも組まれた、公式戦11試合+エキシビション1試合の全12カードを徹底展望する。
大会を貫くストーリーライン——「相本包囲網」と世代の交差点
今大会の縦糸は、間違いなく相本宗輝だ。プロ9戦9勝、うち7KO。しかも本人と過去に拳を交えた男たちが、同じ夜のリングに次々と上がる。第9試合の五明宏人と太田将吾は、いずれも相本に敗れた経験を持つ者同士の対戦。そしてメインで相本と向き合う山田聖真に敗れた神田コウヤは、第8試合で再起戦を戦う。つまりこの大会は、フェザー級で無敗街道を走ってきた相本を中心に、その周囲で敗者たちが再起を懸ける「相本相関図」の様相を呈している。
もう一つの軸は世代だ。20歳の石坂空志・鈴木大晟・石原射、19歳の横内三旺ら10代・20代前半の新鋭が前半戦に並ぶ一方、41歳の太田将吾、39歳のケンシロウ、そして42歳でグローブを置く越智晴雄と、遅咲き・ベテラン勢が要所を締める。世代の交差点としても見応えのある一夜になる。
メインイベント:相本宗輝 vs 山田聖真——DEEPライト級 5分3R
相本宗輝(ROOM)は2023年5月のプロデビュー以来9戦全勝、9勝のうちKOが7つ、判定が2つという徹底したフィニッシャーだ。直近は2025年12月のDEEP 129で高橋遼伍を1R 3分28秒KO(右フック→パウンド)、その前の2025年9月のDEEP 127では木下カラテをわずか1R 14秒でTKOと、近況は初回撃墜が続く。今年3月にはRIZINでのコレスニック戦が決まっていたが、自転車走行中の接触事故により欠場。本来はフェザー級を主戦場としてきた25歳が、今回はライト級で復帰戦に臨む。
対する山田聖真(JAPAN TOP TEAM)はMMA7勝4敗ながら現在4連勝中。その内容が濃い。井上竜旗、宇良拳、北岡悟に判定勝ちし、直近の2026年2月には、2024年12月に敗れていた神田コウヤをスプリット判定で下してリベンジを果たした。DEEP公式が「JAPAN TOP TEAMの秘密兵器」と紹介する存在で、ファンサイトの紹介によれば大学まで柔道を続け、24歳でMMAに転向した柔道ベースのグラップラーとされる。
構図は明快だ。初速の打撃で試合を破壊する相本に対し、山田は判定まで持ち込んで競り勝つ勝負強さが持ち味(4連勝はすべて判定決着)。相本にとっては本来のフェザー級から階級を上げた復帰戦であり、フェザー級で通用したパワーがライト級の相手にどこまで通じるかが最初の関門になる。山田がいつも通り試合を長い時間帯に引きずり込めば経験値の差が生きるが、相本の直近2試合はいずれも1Rで終わっている。序盤の被弾を避けて2R以降に持ち込めるか——山田の入り方が最大の焦点だ。両者に過去の対戦はないとみられ、無敗の勢いか、いぶし銀の4連勝か。予想は僅差ながら、初回から仕掛ける相本のKO決着の可能性をわずかに上に取りたい。
セミファイナル:猿寿健太 vs 火の鳥——58kg以下契約 5分3R
猿寿健太(K-Clann)は通算9勝5敗。Wikipediaによれば今年「KENTA」から改名したとされる、柔道一筋の青春時代を経て30歳でMMAに転向した苦労人だ。2025年8月のDEEPフライ級王座決定戦で村元友太郎に2R TKOで敗れ、今年5月のDEEP 131でも関原翔に判定0-3。現在2連敗と後がない。なお本戦は本人のコンディション不良により、フライ級から58kg以下の契約体重に変更されている。
火の鳥(BRAVE GYM)は本名・高木恭平。16歳からレスリングを始め、島原工業高校から青山学院大学と競技を続け、JOCジュニアオリンピックカップのフリースタイル50kg級で準優勝した実績を持つ。29歳でMMAの練習を開始し、プロ戦績は4勝1敗。2025年11月のDEEP初参戦でリングネームを本名から「火の鳥」に改めた一戦こそ木村琉音に判定1-2で落としたが、以降は中務修良を2Rツイスターで仕留め、2026年4月のRIZIN LANDMARK 13では本田良介を1R TKOと2連勝中。ドフラミンゴのコスプレやジャンボリミッキー×エレクトリカルパレードのリミックスで入場するなど、演出でも会場を沸かせる男だ。
興味深いのは共通の対戦相手・本田良介の存在。猿寿は判定で勝ち、火の鳥はTKOで沈めた。柔道の猿寿とレスリングの火の鳥、組み技バックボーン同士の力比べは、フィニッシュ率と勢いで上回る火の鳥がやや優位か。ただし猿寿には渡部修斗をニンジャチョークで仕留めた一本の引き出しがあり、グラウンドの読み合いは最後まで分からない。
第9試合:五明宏人 vs 太田将吾——DEEPフェザー級 5分3R
2019年の全日本空手道選手権を制した伝統派空手エリートの五明宏人(JAPAN TOP TEAM)が、通算8勝7敗ながら現在3連敗と崖っぷちに立つ。2024年大晦日のRIZINで赤田功輝にスプリット判定勝ちした実力者が、今年3月は椿飛鳥に2R TKO負け。一方の太田将吾(NEX SPORTS)は異名「オールドルーキー」。37歳でプロデビューした41歳で、通算6勝6敗、DEEP公式には「元暴走族総長」とも紹介される異色の経歴だ。RIZIN 51で杉村コウスケに敗れた後、今年4月に中村雄一へ判定勝ちして再起した。両者はともにメインの相本宗輝に敗れた過去を持つ(五明は判定、太田は1R TKO)。全日本を制した伝統派空手の技術を持つ五明が本来の力を出せば優位だが、3連敗中のメンタルは未知数。負ければ後がない者同士の消耗戦になれば、勝負弱さを跳ね返してきた41歳の粘りが牙を剥く。
第8試合:神田コウヤ vs ケンシロウ——DEEPライト級 5分3R
「武士道(BUSHIDO)」神田コウヤ(THE BLACK BELT JAPAN)は第11代DEEPフェザー級王者で、2023年にはRoad to UFCでイブゲレに判定勝ちして準決勝に進んだ実績を持つ14勝9敗のトップ戦線経験者。だが2025年11月のDEEPライト級暫定王座決定戦で大原樹理に2R TKO負け、今年2月にはメイン出場の山田聖真にスプリット判定で敗れて2連敗中と、キャリアの正念場を迎えている。迎え撃つケンシロウ(FIGHTER'S FLOW)は39歳にしてプロ5戦5勝の無敗。柔道で全国高校選手権3位の実績を持ち、37歳だった2024年11月にプロデビューして以来、5連勝で駆け上がってきた。今回が自身初の3R戦だ。レスリング天皇杯ベスト8の組みと50%のKO率を併せ持つ神田の総合力は明らかに一枚上だが、2連敗中の元王者と無敗の遅咲き——このカードの持つ物語性は、番狂わせの匂いを含んでいる。
引退エキシビション:越智晴雄、18年のキャリアに幕
2008年2月に修斗フェザー級でプロデビューし、通算42戦27勝12敗2分1NC。DEEPストロー級のベルトを2度巻いた越智晴雄(Little Giant Gym)が、42歳でグローブを置く。報道で「小さな巨人」と称された職人は、2025年12月に杉山空へ判定で敗れて王座から陥落し、引退を決めた。エキシビション(グラップリングルール2分3R)の相手は、いずれもCAVEでの練習仲間でセコンドも務めた間柄という豪華な3人——初代RIZINフェザー級王者にして第10代修斗世界フェザー級王者の斎藤裕(9月10日の超RIZIN.5で復帰戦が決定済み)、第2代バンタム級キング・オブ・パンクラシストの石渡伸太郎、そして元修斗世界フェザー級王者でONE FCバンタム級グランプリ王者の上田将勝だ。功労者を送り出すにふさわしい、温かくも豪華な儀式になる。
その他の注目カード——前半戦も気を抜けない
第7試合/DEEPバンタム級 5分3R:河村泰博 vs 山本有人。 15勝のうち11が一本という究極のサブミッション職人・河村泰博(和術慧舟會AKZA、15勝10敗1分)と、直近5戦4勝1敗と波に乗る山本有人(リバーサルジム東京スタンドアウト、8勝6敗)の初対戦。元Fighting NEXUSバンタム級王者の河村は前戦で石司晃一に敗れており、キャリア11年の巻き返しなるか。山本は前戦こそ相手の反則による1R勝ちだったが、フェザー級GPでKO勝ちした地力がある。
第6試合/DEEPフェザー級 5分2R:鈴木大晟 vs 高橋正親。 隠れた好カードの無敗対決。20歳の鈴木大晟(パラエストラ八王子)は4戦4勝、しかも全てフィニッシュ(KO/TKO2・一本2)で3試合が1R決着という危険な新鋭。21歳の高橋正親(BRAVE GYM)はDEEPフューチャーキングトーナメント2024フェザー級優勝からプロ2戦2勝。フィニッシャーと堅実派、どちらの無敗が続くか。
第5試合/DEEPフライ級 5分2R:マサト・ナカムラ vs 斎藤璃貴。 通算10勝13敗1NCの29歳ナカムラ(レンジャージム)に、22歳の斎藤璃貴(Fight Holic、3勝1敗)が挑む構図。両者は神酒龍一に勝利した共通点を持つ。1R 45秒TKOの快勝もある斎藤が初黒星からの立て直しを図る。
第4試合/DEEPフライ級 5分2R:松井優磨 vs 石原射。 松井(KATANA GYM、3勝1敗2NC)は今年3月に濱口奏琉へ1R TKOで初黒星を喫したが、第5試合出場のナカムラを1R裸絞めで下した実績を持つ。対する20歳の石原射(GRABAKA)は第1回MMA甲子園バンタム級王者から2024年6月にプロ入りした5勝2敗の新鋭で、直近は判定勝ち。ここもフライ級の生存競争だ。
第3試合/DEEPバンタム級 5分2R:石坂空志 vs 矢野武蔵。 前半戦最大の好カード。20歳の石坂(クボジム/BRAVE GYM)は7勝1敗で現在5連勝中、RIZIN 51で山木茉広に勝った経験も持つ。21歳の矢野(パラエストラ愛媛)は5勝1敗1分で2連勝中、一本2つの修斗育ち。若手有望株同士の潰し合いは将来のバンタム級戦線に直結する。
第2試合/DEEPフライ級 5分2R:武利侑都 vs 横内三旺。 KRAZY BEEの武利(3勝3敗)は3勝すべて判定ながら現在2連勝中で、直近は第5試合出場のマサト・ナカムラに勝利。19歳の横内「おにぎりくん」(フリー、1勝3敗)はRIZIN 50で前田吉朗と対戦した経験を持ち、唯一のプロ勝利は第4試合出場の石原射から挙げたもの。フライ級の相関図がここでも交錯する。
第1試合/DEEPフライ級 3分2R アマチュアSルール:秋元優志 vs 荒井夕翔。 JAPAN TOP TEAMの21歳・秋元は直近のアマ戦で谷口仁歩に2R TKO勝ち。荒井(FIRED UP GYM)はDEEP公式戦で確認できる直近のアマ2戦を、三角絞めと1R TKOでいずれもフィニッシュしている。開幕のアマチュア戦から飛ばしていこう。
まとめ——「無敗」の値打ちが試される夜
完売のニューピアホールで問われるのは、詰まるところ「無敗」の値打ちだ。メインの相本宗輝(9戦9勝)、第8試合のケンシロウ(5戦5勝)、第6試合の鈴木大晟(4戦4勝)と高橋正親(2戦2勝)——4人の無敗ファイターがそれぞれ、階級の壁、元王者、そして同じ無敗の相手という異なる試練に挑む。その一方で、42歳の越智晴雄が18年のキャリアに別れを告げる。始まる者と去る者が同じリングに立つ、DEEPらしい濃密な一夜。14時の第1試合から見届けたい。
(記事中の戦績・試合結果はSherdog、Wikipedia、ゴング格闘技、BOUTREVIEW、MMAPLANET、DEEP公式サイト等の公開情報を基に構成。2026年7月2日時点)


